2018Tencent杯世界囲碁AI大会予選(2)

6月23、24日に行われた「2018Tencent杯世界囲碁AI大会予選」を振り返っていきます。
人間だけでは到底思いつかない発想が多く、新しい碁の在り方を示されたようにも感じます。
今回は序盤の打ち方を中心に予選の数局を取り上げていきます。


【実戦譜1:新時代の布石】
黒番がAya、白番がAQです。
黒1、3と右辺に黒陣を構えた瞬間、白4の三々入りから地を稼ぐのが主流の打ち方。
従来の考え方なら黒Aで右辺に模様ができるため、黒満足な展開だと言われてきました。
しかし、先の打ち方が研究されたことで、現代では有力な手段として認められています。


黒5から11と右上を厚くして、素直に右辺の模様を広げる進行を選択します。
黒は理想的に見えますが、白12とさらに稼ぐのが有力で黒容易でないことがわかっています。


黒17から25と中央から右辺にかけて大模様を築いた瞬間、白26と消しに回るのが好点。
四線の肩ツキは地を稼がれる短所はありますが、厚みの働きを制限できれば白十分です。
複雑な手法を用いず、大局観で局面のバランスを取れるのが囲碁AIの長所の一つです。
結果、白中押し勝ち。



【実戦譜2:鋭い踏み込み】
黒番が星陣囲碁(Golaxy)、白番がRaynです。
白1と大きく左辺を囲ったタイミングで黒2と打ち込むのが厳しい手でした。
A~Cなどシノギの手がかりがあり、見た目以上に黒を捕まえるのが困難です。
最近の囲碁AIは読みの力が向上しており、切れ味鋭い打ち回しができる域に達しています。


白3と根拠を奪うのは当然の態度。
しかし、黒4が脱出を図りながら自身の懐を広げる好手で既に白容易でない戦況です。
白5から9と強引に封鎖しつつ、黒の眼形を奪っていきますが・・・。


黒10、12と整形するのが冷静な打ち回し。
白13と封鎖せざるを得ませんが、黒14から20と下辺を切断されて白窮しています。
白はAの二子取りとBの出切りを同時に守る術がないため、黒のシノギが確定しました。


白21と下方を守る手を選択するも、黒22から24が丁寧な決め手で脱出できた格好です。
仮に白AやBと封鎖を試みるのは黒Cの切りで白四子が切り離されるため封鎖できません。
左辺は白の勢力圏に見えましたが、周囲の利きもあり意外と脆かったようです。
結果、黒中押し勝ち。



【実戦譜3:異次元の世界】
黒番が章鱼囲碁、白番が絶芸(FineArt)です。
白1と序盤早々に敵陣へ踏み込むのが囲碁AI特有の手法。
相手の出方を見て変幻自在に立ち回れる特徴があり、黒の応じ方も見た目以上に難しいです。
ただし、白は高度な大局観を求められるため、非常に扱いづらい戦術とも言えそうです。


黒2と手堅く受けるなら、白3から5と形を決めて整形するのが面白い。
黒Aは白Bと弾力ある形を築かれて厳しい攻めを繋げるのが難しいので・・・。


黒6と封鎖する進行を選択します。
白7でほぼ治まった形を築かれても、外回りを厚くすれば黒悪くないと見ているようです。
白Aと生きを確かめるのが無難ですが、絶芸は卓越した大局観で現局面を打開していきます。


白15と動き出して厚みの働きを削ぐ進行を優先していきます。
白23まで、Aの傷やBの急所を狙われて白が忙しい局面に見えますが・・・。


白25の切りを入れるのが絶妙な様子見でした。
黒Aは白B、黒C、白Dのシボリが決まるので、右上の白が十分な形で治まってしまいます。


右上の白が大きく治まらないよう、黒26と頑張った受け方を選びます。
黒34まで、部分的に白五子が取れており白が持ち込んだかのように見えるが・・・。


白35、37を決めてから、冷静に白39と守るのが凄まじい大局観。
Aから中央を厚くする手とBの追及を見合いにされて黒ツライ局面を迎えています。
また、右辺の攻め合いの具合があり、黒は右上隅の白を取りにいけないのも泣き所です。
右辺の捨て石が黒の狙いを封じながら、様々な狙いを浮かび上げらせる絶妙な手法でした。


黒40と封鎖を嫌うのは当然の態度。
しかし、白41から43が黒のダメヅマリを突く厳しい追及で黒が強く反発できません。


黒44、46と中央突破を図った瞬間、白47とサシ込むのが決め手。
勢い黒Aと抜きたくなりますが、白Bで右辺の白が復活するため黒ツブレてしまいます。


黒48と受けざるを得ないですが、白49と中央を厚くできれば白満足な展開です。
黒の勢力圏で捨て石を駆使して打開していく絶芸の技が光った好局と言えるでしょう。
結果、黒中押し勝ち。

「編集後記」
予選の35局を見ましたが、どの局も凄まじい戦いをしておりぜひ全局を鑑賞したいところ。
今回は序盤よりも中盤の戦いで面白い技が多いので、中盤に注目してほしいですね。

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