囲碁AI・星陣の三十番勝負、第1局~第3局

中国で囲碁AI・星陣と中国棋士の三十番勝負が行われ、星陣が28勝2敗の好成績をあげた。
他の囲碁AIよりも自由奔放な棋風で、力強いというより非常に柔軟であるように感じる。
今回から各局のハイライトを3局ずつ紹介し、新しい碁の打ち方を探求していく。


【第1局:柔軟な石運び】
黒番が劉兆哲六段、白番が囲碁AI・星陣です。
黒2と左上の白にプレッシャーをかけた瞬間に、白3と反撃するのが強手。
左上の白を捨てて、左辺の黒を攻める転身も考えられるため、黒の対応が悩ましいです。


黒4、6と分断するのが無難な対応。
しかし、白9が左辺の守りと左下の攻めに働く攻防の一手となるので白十分です。
一方、黒10と手を戻してAの傷を緩和しても、左上の白の動き出しが残るのが黒の泣き所。
白11まで、白は盤面広く使って足早に好点を占める展開となりました。


黒12は下辺の白陣拡大を牽制する好点。
しかし、白13と動き出すのが機敏で、黒地が大きくなりそうな土地を着々と削っています。
囲碁AIは盤面広く使う印象が強いが、本質は相手に有力な選択肢を与えない厳しさです。
一度優勢を奪われるとほぼ逆転できないと言われている理由の一つです。


黒14と上辺への進出を止めるのが無難。
白15から21と懐を広げた後、左上に手を戻さずに白23と黒模様を消すのが絶妙手。
白Aの切りが成立する局面となっているため、間接的に左上の守りに働いています。
人間と囲碁AIの違いは、こうした中央の打ち方を知っているか否かかもしれません。


黒24と受けた瞬間、白25から27を決めてから白29と切るのが好手。
白には右上の黒陣削減と上辺の黒二子を取り込む狙いがあり、黒収拾するのが難しい。
この後、上辺の攻防から白は右辺の進出を止めて下辺一帯に巨大な模様を築きます。
最近の囲碁AIは読みの精度も飛躍的に向上しており、手所の鋭さが増しています。
結果、白中押し勝ち。



【第2局:自由な石運び】
黒番が丁浩五段、白番が囲碁AI・星陣です。
白1、3と軽く上辺を割った後、上辺を守らずに白5の受けを優先します。
人間的な感覚では黒Aなど上辺を割られて、白不利な戦いになるように見えますが・・・。


黒6と上辺を割れば、左上と右上の白を狙える碁形にできたように見えます。
しかし、白7から11と右上を補強された後、黒の手が意外にも続かない局面となっています。
右上の白が強いので、黒Aと根拠を奪っても白Bなど厳しい攻めが繋がらない。(参考図参照)


左上に手つけるのは黒良くないので、黒12と大場に走る展開を選択。
この瞬間、白13と相手の受け方を見て、左辺と左上の決め方を変えるのが面白い手法でした。
続いて、黒Aと反発するのは白Bでサバけるので・・・。


黒14は左上隅のサバキを封じる意図です。
単に白Aと応じても戦えそうですが、白15とさらに相手の出方を見ていきます。
左辺の二間ビラキは固めても構わないので、利かしやすい意味があります。


黒16、18は左辺を固めながら、左下の連絡を図る手堅い受け。
しかし、白19から21でAかBの何れかに回れる戦況となり、白有利な戦いになりました。


黒22と上辺の脱出を図るが、白23から29と左辺の黒陣を制限しつつ厚い形を築いて白十分。
上辺は黒から仕掛けた戦いにも関わらず、いつの間にか力関係は白に傾いています。
感覚的に戦いの間合いを図るのではなく、先の展開を具体的に想定する必要があります。
結果、白中押し勝ち。


【参考図1:戦いの調子】
黒1と根拠を奪うのは、白2から8と眼形豊富な形を築かれて黒の攻めが空振りします。
右上の白への狙いがないため、上辺の黒が攻めの対象となり黒失敗です。


【参考図2:サバキの手筋】
黒2と強く反発するのは白3からサバキの筋に入ります。
続いて、黒Aには白Bと整形して白十分なので・・・。


黒4と隅の根拠を奪いにいきたいところ。
しかし、白5から7で黒の薄みが目立つ局面となり、黒収集突かない格好となります。


黒8の反発には白9を利かした後、白11と上辺の黒を分断するのが厳しいです。
Aの切りも見られており、黒不利な戦いを強いられます。



【第3局:強烈な反撃】
黒番は楊楷文六段、白番は囲碁AI・星陣です。
黒2、4を決めてから黒6と白に迫る戦術は人間界でよく打たれていました。
急戦模様の戦型を囲碁AIがどう対処していくのか、解説していきます。


白7、9は上辺の黒を大きく取り込もうとする受け方。
当然、黒10と強引に動き出して、上辺一帯の白を分断していくところ。
白は苦しい戦いを強いられているように見えますが、星陣は華麗にサバいていきます。


白11と頭を叩いてから白13と右下の黒に働きかけるのが好手でした。
Aの封鎖とBから押さえ込む狙いがあり、僅か数手で黒窮した格好となっています。


黒14と断点を作ってから、黒16と上辺を補強する手順を選択。
しかし、白17から19と追及するのが厳しく、黒が追い詰められていきます。


黒20と切った瞬間、白21のコスミが決め手となりました。
白に封鎖されないよう黒22と出ていくが、白23から25と右辺を守られて黒苦しい戦いです。
黒Aと右上隅の生きを図るのは白Bで黒四子を厳しく攻められてしまうので・・・。


黒26から30と外回りを厚くするも、白31と右上隅を取られては白の実利が大きいです。
黒はAやBの傷が残っているので、外壁の整備をしなければならないのが黒の泣き所。


黒31と手を戻すのは仕方ないところ。
白32は上辺のシノギを図るのではなく、AやBなど荒らす手がかりを残す意図。
白34まで、上辺は黒地になるまで手数がかかるので、確定地の多い白が打ちやすい局面です。
囲碁AIは切れ味鋭い力強さに加え、繊細な利かしも使い分けられるようになっています。
結果、白中押し勝ち。

「編集後記」
見所が多くてどこを取り上げるべきか迷い、編集が遅れてしまいましたorz
次回はもう少し軽い記事でまとめる予定です。

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