第1回貝瑞基因杯世界AI囲碁大会ー二日目

4月28日に中国・福州で「第1回貝瑞基因杯世界AI囲碁大会」の準決勝、決勝が行われた。
決勝戦でPhoenixGo(BensonDarr)がFineArt(絶芸)を2勝1敗で破り、初優勝を飾った。
人間の域を完全に超えた内容で、何が起きているのか解釈し難い内容であった。
以下に本日の結果をまとめたので参照ください。(左側が勝者)

【4月28日(土):準決勝、決勝の結果】
<準決勝>

FineArt(中)ーTSGo(中)
PhoenixGo(中)ーLeelaZero(ベルギー)

<決勝三番勝負>
△PhoenixGo(中)ーFineArt(中) 黒中押し勝ち
PhoenixGo(中)ー△FineArt(中) 白中押し勝ち
△FineArt(中)ーPhoenixGo(中) 黒中押し勝ち

<3位決定戦>
LeelaZero(ベルギー)ーTSGo(中)

急速に進化した囲碁AIは、人間界の枠を越えた別次元の碁を打っている印象である。
極端に言えば「別のゲームをやっているようにすら見えてくる」そんな衝撃を受ける。
碁に対する人間の解釈がどこまで正しいのか、改めて見直す必要がありそうだ。
さて、対局を振り返っていきます。


【決勝三番勝負第1局:絶妙なバランス感覚】
黒番がPhoenixGo、白番がFineArtです。
黒1、3は囲碁AIが好む打ち方で、人間界でも主流となっている手法の一つ。
白4は自身のダメヅマリを避けて、右辺の黒陣拡大を牽制する繊細な工夫です。(参考図参照)
僅か数手の出来事ですが、非常に神経の行き届いた受け方と言えます。


黒5と弾力ある形を築いてから、黒7と左上の白にプレッシャーをかけていきます。
左辺の黒を攻めたいですが、後手を引いて黒Aの好点に先着されるのは避けたいところ。
黒に左辺と右辺の両方を打たれる展開を避けるため・・・。


実戦は白8と右上の黒に迫っていきます。
白の手抜きを咎めるため、黒9から11と左上の白を攻めるのは当然の態度。
黒15まで、左上の攻めを残しながら左辺が収まったので黒それなりの戦果と言えそうです。
右上の黒は封鎖されても、黒A、白B、黒Cと生きる手がありすぐに丸呑みされない形です。


右上の黒を取り切るのに手数がかかるので、白16と大場に走るのが無難です。
ここで、黒17から19と左上の白を睨みながら、中央に進出するのが機敏でした。
中央の主導権を握れば、間接的に下辺の白陣が薄くなるのが黒の自慢です。
囲碁AIは大局観が優れているので、バランス感覚は参考になります。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図1:効率的に広がる】
白1から5と無難に形を決めるのは軽率です。
黒6まで、右上の白がダメヅマリとなっており、右辺の黒陣が消すのが見た目以上に難しい。実戦進行はダメヅマリを避けることで、本図よりも右辺を削りやすくする意図があります。



【決勝三番勝負第2局:次世代の手法】
黒番がFineArt、白番がPhoenixGoです。
小目の一間ジマリに対し、白1のツケが囲碁AI発の奇襲戦法。
相手の出方に合わせて先の打ち方を変える意図があり、黒も強く反発したいところです。


黒2から6と反発するのがよく取られる対抗策。
白はダメヅマリとなっているため、黒有利な戦いに導けそうですが・・・。


白7、9と右上を補強するのが相場。
黒10と受けた瞬間、白11と相手の出方を見るのが好手です。
続いて、黒Aと下から応じるのは白BやCの味が残るため、黒得策ではありません。


黒12と受けるのが当然の一手。
右上隅が固まりますが、白13から17と上辺を占めながら黒を攻めれば白十分追いつけます。


黒18から24と制空権を確保しますが、右辺に黒地がつきづらい碁形になります。
白29まで、上辺を占めながら右辺の発展性を削いでいるので若干白打ちやすく見えます。
囲碁AIの登場により小目ジマリへの対抗策が多く出ており、研究する必要がありそうです。
結果、白中押し勝ち。


【参考図2:捨て石の手筋】
黒2と上辺の白を取りにいくのも考えられます。
しかし、白3と黒4を交換して手数を稼いだ後に、白5と上から利かすのが好手順です。


黒6で白三子を助けるのは難しいですが、白7と捨て石に活用するのが好手です。
黒AやBと抵抗するのは白Cの切りで黒窮した格好となります。


黒8と受けざるを得ないが、白9と封鎖できれば白満足なワカレでしょう。
AやBが利きなので、見た目以上に厚い格好となり白優勢です。



【決勝三番勝負第3局:反発の精神】
黒番はFineArt、白番がPhoenixGoです。
白1に黒Aと受けず、黒2と下辺を固めるのを優先したのが鋭い切り返しでした。
右辺は互いに価値の低い場となっており、打ち続けるのは得策でないと判断したようです。


白3から9と先手で左下を補強した後、白11の好点に先着する進行を選択。
右上の白が強固になれば、白Aが厳しくなるので白の楽しみが多い局面に見えたが・・・。


黒12の様子見が面白い。
白13で右上隅を固められますが、黒Aが利くためBの傷を緩和できています。
また、白にコウ材がないこともあり、黒14に白15と受けざるを得ないのも黒の自慢です。
右上の白が固いので黒16など利かしやすく、僅か数手で黒の都合の良い戦況に変わりました。


黒の意図する進行から脱却するため、白17から19と下辺を割っていきます。
右下の黒全体を狙われているので、黒20から22と整形するのが相場です。
自然な石運びで右下の傷を補強できるのが大きく、形勢が黒に傾きつつあります。


白はシチョウが悪いので、白23から25と黒一子をカミ取るところ。
白27に受けず、黒28と右上の白陣を削る好点に先着して実利を稼いでいきます。
Aの切りは黒に響かないので、白29と迫って右下の黒全体を睨む展開を選びます。


黒30は実利だけでなく、Aと眼形を築く後続手段を見た手です。
白33と右下隅への利きを消して右下の黒を脅かしますが、構わず黒34と下辺を補強します。
白は右下に手数をかけた以上、それなりの戦果を上げる必要があります。


白35と下辺を補強しながら右下の黒に迫りますが、黒36から38でシノギ形を得ています。
白39、41の追及も、黒42でAとBを見合いにして取られる心配がない戦況となりました。
上辺の黒陣が大きく広がる可能性がある分、黒が若干打ちやすい形勢と言えそうです。
囲碁AIの特徴の一つは、相手の利かしに受ける場合が非常に少ないところです。
結果、黒中押し勝ち。

「編集後記」
上位4位の囲碁AIは異次元の碁を打っており、読み解くのに苦労しますね。
ただし、囲碁AIが必ずしも正しいとは限らない点を留意しなければなりません。

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