囲碁AI・BensonDarrの観戦記(6)

囲碁AI・BensonDarrは野狐囲碁に出現する度に目新しい手法を示してくれます。
今回も特定の形で同じ変化を選択した戦術があったので、実戦譜を通して紹介していきます。
これから実戦例が増えそうな形なため、把握しておくと良いかもしれません。


【実戦譜:ハサミの位置】
黒番がBensonDarr、白番が卞相壹六段です。
序盤早々、黒1の三々入りから地に辛く打つのは囲碁AI特有の石運び。
白2、4と左上の定石で手番を得てから、白8と大場に走るのはよくある進行。
ここで、黒9のハサミが珍しい位置で人間的な感覚では中々思いつかない手法でした。


白10のカケに黒11、13と出切るのがBensonDarrの狙いです。
▲が中途半端な位置なので、左下の白を封鎖して追及するのが難しく見えますが・・・。


白14に黒15、17を決めてから黒19とダメを詰めながら封鎖するのが強手でした。
左下の白二子はダメヅマリとなっており、見た目以上に身動きの取れない形に導かれてます。
また、左辺に大きな白地がつきづらく、自然な流れで白は価値の低い場に誘導されています。


白20から24と黒の形を崩しながら厚い形を築けるのが白の自慢です。
しかし、白26と動き出しても黒27と止められて、左下の白は苦しい形に追い込まれています。
通常、白は厚い形を築けたので、左下でコウに持ち込めれば白悪くない展開になります。
ただ、左辺が白地になりにくい現局面では、単純なフリカワリでは白の損失を補えません。


部分的には白28から34でコウに持ち込めます。
ただ、黒はコウに負けても外周に影響がなく、コウを譲る選択を常に持てるのが大きいです。
黒に連打される想定をしながら、白は細心の注意を払いつつコウ材を打つ必要があります。


黒37、39と受けたので、白40とコウを抜き返します。
はっきりした黒のコウ材がないように見えたが、黒41が気づきにくい好手でした。
白Aと解消するのは黒Bのノビ切りが大きすぎるので、白は受けざるを得ません。


白42、44と受けるのは仕方ないところ。
白46の最後のコウ材を打たせてから、白48に黒49の傍コウを使うのが正しい手順。
最後に傍コウを使うのは、コウ争いに勝てる状況を作り出す常套手段です。


左下のコウ争いの代償に、白52から54と左上の黒を制すのが相場です。
黒55は左辺を守ると共に左下の白への攻めを見ているので、白56と受ける一手。
黒57が絶妙な位置で白58の境界線で白地にされるなら黒十分足りると主張しています。
この感覚が囲碁AIの強味であり、人間よりも形勢判断が優れていると言われる所以です。


白60と右下隅に入りますが、黒61から65と確実に手番を奪う手法を選択します。
白66までの白の稼ぎは小さくないものの、黒67の好点に先着できれば黒悪くないと見てます。
実際、白72と左上を大きくまとめても、黒73から75と下辺を拡大すれば黒優勢は明らか。
黒は右上の白を飲み込んでいるので、下辺の一部が地になれば十分足りる形勢です。
一連の流れを見ると、随分前からこうした状況を想定していたように思えてなりません。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図1:反発しづらい格好】
黒1の切りに白2と反撃する変化も考えられます。
しかし、黒7とノビられた瞬間、白Aと無難に受けると黒Bで白二子を取られてしまいます。


【参考図2:厳しい狙いがない】
白2のツケには黒3と抱えるのが手厚い。
白は左下を厚くされた代償を下辺に求めていきますが・・・。


白6と頭を叩かれても、黒7から11とかわして黒十分です。
手番を得た黒は、左下の厚みを背景に黒13から17と追及して黒有利な戦いに持ち込めます。

「編集後記」
中途半端に見えるハサミですが、相手にハッキリしたサバキを与えない厳しい手のようです。
もちろん、全ての局面で良くなる変化ではありませんが、本譜においては有力な戦術でした。
今後、今回紹介したハサミが多くの対局で現れるような予感がします。

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