第19回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦第13戦

3月1日に中国・上海で「第19回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦」の第13戦が行われた。
韓国の金志錫九段が中国の柯潔九段に逆転勝利を収め、5年ぶり12回目の優勝を果たした。
最終的な戦況を以下にまとめたので参照ください。

【日本】井山裕太九段、山下敬吾九段、一力遼八段、余正麒七段、許家元七段
【中国】柯潔九段、党毅飛九段(5連勝)、陳耀燁九段、周睿羊九段、范廷鈺九段
【韓国】朴廷桓九段、金志錫九段(2連勝)、申眞諝八段、申旻埈六段(6連勝)、金明訓五段

本棋戦の結果より、世界の勢力図が中韓の二強に移り変わったようだ。
韓国囲碁界は棋戦の減少など厳しい状況なので、これを機に好転するかもしれない。
一方、日本は11年連続3位というツライ結果となり、大きく出遅れている現状だ。
言葉に出さないが、囲碁ファンの多くは深い失望感を抱いていることを忘れないでほしい。
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:足早な石運び】
黒番は金志錫九段、白番は柯潔九段です。
白1と黒2を交換してから白3とツケるのが現代的な打ち方です。
右上の黒陣は元々手堅い構えだったので、黒4から6と固められても問題ありません。
白7まで、右辺を占めながらゆとりある形を得て、白足早な展開となりました。


黒8に白9と上辺を狭くハサむのが好感覚。
上辺に黒陣を築かれると右上の厚い形が活きるので、白としては牽制したいところです。
黒10の両カカリを許しますが、黒に模様を築かれなければ穏やかな碁形に導けます。
白は終盤まで均衡を保ち、コミの負担が重くなる局面に持ち込むのが基本戦術です。


黒18まで、実利と厚みのいい加減なワカレとなりました。
ここで上辺の白を守らず、白19と足早に展開するのが明るい発想です。
黒Aに迫られると、上辺に黒陣を築かれて右上の厚みが働きそうですが・・・。


黒20の好点に先着されますが、白21と下辺を広げるのも好点で甲乙つけ難いところ。
次に白Aのコスミツケが急所となるので、黒22など備える必要があります。
この瞬間に白23と動き出すのが柯潔九段の構想でした。


左上の白が厚い形なので、黒24とノビるのが相場。
白25から29と整形した後、白31が自身の補強と下辺の模様拡大に働く好点になっています。
柯潔九段はこの進行を想定して、下辺を先着する展開を選択したようです。


黒32の追及に白33と軽くかわすのが柔軟でした。
黒34で右下が厚い形になりますが、白35が左辺重視しながら隅を固める面白い構え方です。
例えば、黒Aと三々入りするなら白Bと受けて部分的には黒取れている形になっています。
こうした才気あふれる打ち回しを見ると、柯潔九段は一歩先を進んでいる棋士と感じますね。


【参考図1:明るい発想】
白1のツケに黒2と反発するのも考えられます。
しかし、白は直接動き出さずに白3など右辺に構えるのが明るい着想。
黒4など手を戻す必要がありますが、白5まで左上と右辺に先着できた白の利が大きいです。
また、白Aと動き出す味もあり、右上の黒陣が全て地になっていないのも悩みの種です。


【参考図2:基本的な急所】
白1に手抜きするのは白3が形の急所となります。
AとBが見合いにされており、見た目以上に黒苦しい格好です。


黒4には白5、7と右下の黒を追及していきます。
取られる石ではありませんが、攻めにより周囲の白陣が固まるので黒良くないです。


【参考図3:隅の死活】
黒1の三々入りで最低限コウに持ち込めるように見えますが、白2が厳しい応手です。
部分的な生きがないため、局面次第では捨て石の活用もできずに飲み込まれます。


黒3には白4と取り掛けに向かいます。
黒5と脱出を試みても、△が控えているため白6と引かれて黒に脈はありません。
続いて、黒Aのツギは白Bなど封鎖して黒を取れます。



【実戦譜2:会心の返し技】
白1から7で右辺の黒六子を取って白の大戦果に見えたが、黒8が鋭い返し技でした。
これにより、上辺の白が取られてしまったので黒勝勢に転じます。


白9、11の抵抗に黒12と逃げ出すのが決め手となりました。
黒Aが利くと右辺の黒が助かるので、白Bと黒三子を取りにいけません。


白13と受けざるを得ないのが白の泣き所。
黒14で上辺の白を飲み込めば黒の戦果が大きく、黒勝ちは揺るぎません。
黒18から22の締め付けを決めて、黒が盤面10目ほど良くなり逆転しています。
少し前まで柯潔九段は会心の打ち回しをしていただけに残念な一局となりました。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図4:右辺の黒が復活】
蛇足ですが、黒1に白2と黒三子を取りにいった変化を紹介します。
黒3が利く形になると、黒5で右辺の黒が生還するので右下の白が取られてしまいます。

「編集後記」
序盤から中盤まで積み上げても、終盤のミス一つだけで崩れ去るのが碁の怖いところですね。
やはり、勝負所で勝ち抜くために読みの力を養うのは必要不可欠であると感じますね。

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