第19回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦第10戦

2月26日に中国・上海で「第19回農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦」の第10戦が行われた。
日本の井山裕太九段は中盤で中国の党毅飛九段の隙を咎めきれず、主導権を奪われてしまう。
その後も懸命に追いすがるも、決め手を逃したツケが大きく無念の敗退となった。
現時点での戦況を以下にまとめたので参照ください。

【日本】井山裕太九段、山下敬吾九段、一力遼八段、余正麒七段、許家元七段
【中国】柯潔九段、党毅飛九段(4連勝)、陳耀燁九段、周睿羊九段、范廷鈺九段
【韓国】朴廷桓九段、金志錫九段、申眞諝八段、申旻埈六段(6連勝)、金明訓五段

井山裕太九段がLG杯決勝戦進出など、日本囲碁界も一歩一歩前進しているように思われた。
しかし、まだまだ中韓の壁は厚く、改善すべき課題が山積していることを痛感する。
今年は始まったばかり、他の世界戦で日本の存在感を示してほしいと願う。
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:現代的な序盤戦】
黒番は井山裕太九段、白番は党毅飛九段です。
白2に黒3、5はよくある定石だが、Aなどに受けず黒7と向かうのが主流の打ち方。
黒Aに白Bと受ける保証はなく、仮に受けても展開次第で黒悪い交換に成り兼ねないからです。
そういった意味で黒7と相手の動きを見て先の打ち方を決めるのは、有力な発想と言えます。


白8、10は無難な受けです。
下辺の価値が低くなったので、黒Aと下辺に向かうのは働きの弱い一手になります。
逆に言えば、下辺を白地にされても良いため、黒Bが利かしやすい碁形となっています。
左下の厚みを背景に、黒11と左辺に黒陣を築くのは当然の態度です。


白12は左辺の黒陣化を防いで、息の長い碁を目指す打ち方。
勝負が長引けばコミの負担が重くなるので、白番の戦術としては有力です。
黒13、15は定石ですが、続けて黒17から19と二線を這うのは非常に珍しい。
普通、必要以上に白を厚くしてしまい、稼ぎ以上の損失に繋がると考えられていたからです。


白20に黒21、23と地を稼いでから、黒25と左辺を補強していきます。
黒Aの切りから左辺と上辺の白を狙う展開を考えられるので、黒悪くないワカレに見えます。
白26の三々入りは大流行している手法ですが、これを切欠に黒が盛り返していきます。


黒27の切りで相手の出方を見るのが面白い。
白28、30と上辺を補強するなら、黒31から37と厚くしながら白に圧力をかけるのが名調子。
黒はAやBなど白を追及する手段を見れる局面となり、黒が流れを掴み始めています。


実戦は白38と手厚く守る選択をします。
黒39に白40、42と黒二子を取られても、黒A~Cの利きを横目に黒43と右辺を占めて黒十分。
右辺一帯の攻防戦で黒がどれくらいポイントを稼げるかが勝負所となりました。


【参考図1:状況が一転】
黒1と白2を交換してから黒3とカケるのは精彩を欠く手順。
白4から8と先手を奪われた後、白10と左下の厚みを牽制されて黒足の遅い展開です。


【参考図2:工夫不足】
黒1から9は基本的な定石の一つ。
しかし、白10など左下の黒を追及されると、周囲は白一色なので見た目以上に追及されます。
実戦進行は左上隅を占めながら左下の黒を守る苦肉の策だったのです。


【参考図3:無難な石運び】
白1と黒2を交換し、白3から5と上辺を広げながら黒Aを緩和して白十分だったようです。
実戦は地に辛い進行ですが、大きな黒地をできる可能性を許しているように感じます。



【実戦譜2:一瞬の隙】
白3の切りから中央の利きを緩和するのは当然の態度。
黒は相手の力を利用して、黒4から8と石の調子で右辺の模様を深くします。
局面次第では、黒Aから中央の白二子を狙われるので白容易ではありません。


右辺が黒地になっては白厳しいため、白9と踏み込んでいくところ。
黒12まで、右辺は黒有利な戦いですが、攻め損なうと白の実利が光る展開になります。


白13から17と周囲の白を強固にする方針を取ります。
攻めの対象が一つの場合、攻めを繋げるのが難しく戦果を上げるのが見た目以上に大変です。


白21は中央の薄みを見ながら右辺で整形する意図です。
白23から27で筋に入っているようですが、黒Aと中央を素直に分断して黒十分でした。
中央が厚くなれば、黒Bの動き出しも強烈になるので攻めの戦果が収拾できます。


実戦の黒28から32でも中央を厚くすることはできます。
しかし、白37と右上の黒に圧力をかけられると守らざるを得ない戦況に陥ります。
また、白Aの切りも強烈な狙いとなっており、黒の薄みが目立つ局面に転じています。


黒38、40と連絡せざるを得ないのが泣き所。
白は手番を得たので、待望の白41に回って中央の黒模様を大きく削って白優勢です。
その後も党毅飛九段は隙の無い打ち回しを見せ、盤石な勝利を収めました。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図4:積極的な仕掛け】
白1に黒2と素直に中央を分断するのが手厚い。
白3から7で右辺はほぼ収まり形ですが、実戦と違うのは黒8に先着できることです。
右上の黒はA~Cなどのシノギ筋があるのでタダでは取られないのが黒の自慢です。
この進行なら黒優勢まで見えてくる局面だったと思います。

「編集後記」
井山九段の奇跡の五連勝を期待してだけに残念でなりません。
ただ、この苦い経験と悔しさを活かせれば、いつか結果に繋がると思うので頑張ってほしい。
次回の世界戦は井山九段と山下九段が出場する第2回ワールド碁チャンピオンシップですね。
ぜひ、良い結果を残せるよう、頑張ってほしいところです。

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コメント

  1. キクヤン より:

    いつも勉強させていただいています。
    冒頭、11月28日に中国・上海で、とありますが2月26日のようです。