囲碁AI・BensonDarrの観戦記(5)

一週間ぶりに現れた囲碁AI・BensonDarrは以前よりも強くなっているように見えます。
他の囲碁AIよりも石を取る技術が高く、比較的大石を仕留めて勝利することが多いです。
人間では考えづらい着想、中盤戦略は見ていて非常に参考になるものばかりです。
今回は復帰戦で見せた凄まじい捨て石作戦を紹介していきます。


【実戦譜:豪快な捨て石作戦】
黒番は八月二十一(中国の初段棋士)、白番はBensonDarrです。
黒5の二間ジマリはAlphaGo手法の一つで人間界でもよく用いられる構え方になりました。
BensonDarrは碁形を問わずに白6と序盤早々に形を決める手法を採用していきます。
黒は受け方次第では左上の構えを凝り形にされるため、簡単ではありません。


黒7と封鎖するのは最強の応手。
白も飲み込まれると持ち込みになるため、白8と左下隅に食い込んでいきます。
黒は無理やり取りにいかず、黒9から11と外周を厚くする方針を取るのが面白い。
左上の白は捨てづらいように見えて、黒の意図した進行を辿るように思えたが・・・。


白12、14と頭を叩いてから白16と三々に入る驚愕の構想を見せます。
人間的な視点では、左上の白三子はほぼ取られの格好で白持ち込んだように思えます。
ただ、上辺の黒模様化を牽制しながら左上の僅かな味を見れるので、白十分と見たようです。


左上に黒が控えているので、黒17と押さえていきたいところ。
白18に黒19と外して手番を得ることを優先するのが最近主流の受け方です。


黒23から27は黒Aとコウに弾く手を残した意味があります。
ただ、Bと右辺を盛り上げられる可能性やDの利きから上辺の黒陣を荒らされるなど、
黒の不利益が残っており、右上の決め方は利点よりも欠点が目立つワカレに見えます。


白30から34と先手で左下隅を打ち切ってから、白36と動いて相手の出方を見ます。
黒Aと左上の白三子を取りにいくのは白B以下符号順で白十分なワカレとなるので・・・。


黒37、39と石の調子で整形していきます。
白40には黒41と左上の制すのが相場で、後に黒Aも狙るので黒悪くないように見えます。
しかし、ここからのBensonDarrの打ち回しが常軌を逸しています。


左上の味を消すため、白42の抜きには黒43と受ける相場です。
この瞬間、白46とツケて左上の黒に働きかけるのが好手でした。
部分的に左上の白に生きがない形なので、黒Aと追及されて白窮したように見えるが・・・。


黒47から51と左上の白をまとめて追及されて白苦しい戦いに見えます。
続いて、白A以下符号順でシノぐのは上辺や下辺の白が攻めの対象となり白良くないです。
しかし、BensonDarrは柔軟な発想でこの難局を打開していきます。


白52、54の出切りがBensonDarrの構想でした。
黒55で左上を大きく取られますが、白56から60と先手で外周を厚くして白十分です。
黒の実利は小さくないものの、白62と右下一帯の白模様が大きく広がるので白優勢でしょう。
大きく石を捨てて、模様拡大する調子を求めた面白い石運びでした。
結果、白中押し勝ち。


【参考図:人間界の実戦例】
人間界でも白1とツケる実戦例が増えています。
黒2には白3の切り違いで相手の応手を利くことが多いです。


黒4と受けるなら白5、7と上辺を割って一段落。
白はAやBを使い分けられる上、▲の配石が若干凝り形である主張を通せます。
ただし、左上の構えは元々薄かったので、自ら固めた意味もあり優劣の判断が難しい。

「編集後記」
野狐囲碁にいる囲碁AIは敗れると一度姿を消し、改善してから出現することが多いです。
実際、BensonDarrは復帰してから負けなしで戦闘力も僅かに上がっているように見えます。

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