囲碁AI・BensonDarrの観戦記(4)

石が攻められたり、圧力をかけられた場合、基本的には手堅く守るのが相場です。
しかし、囲碁AI・BensonDarrは積極的な石運びを見せて局面を大きく動かしていきます。
本局を見ると、守勢に立たされた瞬間こそ、劣勢を覆すチャンスであるように感じます。


【実戦譜1:大胆な模様構築】
黒番がBensonDarr、白番が范蘊若五段です。
右上と右下にシマリが来ているので、黒1と右辺を割るのは自然な一着。
白2、4と右辺の黒に迫りながら右上隅の白陣を固めるのは常套手段です。
黒Aと補強すれば手堅いですが、BensonDarrは大胆な構想で局面を動かしていきます。


黒5と白6を交換した後、黒7から9と右下を捨て石に右辺を補強していきます。
右下の白地は大きいですが、黒は中央の主導権を得ているので黒悪くない序盤戦です。
黒11は中央の勢力圏を広げると共に、右辺の薄みを緩和する働きのある好点です。


白12から16にAと断点を補強せず、黒17と大場に先着します。
続いて、白Aの切りが厳しく見えるため、黒やり過ぎに見えますが・・・。


白18の切りに黒19と中央を厚くするのが柔軟でした。
▲の三子は利かした石なので、捨て石に活用して中央を広げれば黒十分と見ているようです。
一連の石運びに一貫性があり、全ての黒石が左辺の模様拡大に働いています。


白20、22と右辺に厚くし、AやBの傷を狙う展開を選択します。
しかし、右辺の薄みを守らずに黒23と更に左辺の黒模様を広げていきます。
この瞬間に右辺の黒を追及しても、左辺を大きくまとめられては白勝負になりません。
全局的なバランスで右辺の黒を攻める余裕を与えない巧みな石運びと言えるでしょう。


【参考図1:堅実な守り】
黒1と受けるのは無難です。
ただし、白2など大場に回られると、左辺の模様が小さくなり黒遅れているように見えます。



【実戦譜2:盤石な収束】
白1と左辺を消しにいくのは当然の一手。
すぐに攻勢に出たいところに見えますが、黒2と冷静に右辺を補強していきます。
白に左辺を連打されても厳しい狙いはないので、自身の薄みを消した方が堅実ですね。


白3に黒4のワリ込みが強手でした。
白5、7とサバキを求めますが、黒8の切りから中央を厚くされて白劣勢です。
白は左辺を連打できたにも関わらず、大きな戦果を出せていないのがツライところ。


白9のツギに黒10、12と厳しく追及されて白苦しい戦いが続きます。
左上か下辺、中央の何れかに大きな地ができれば、黒悪くない展開となります。


白13、15は白二子を捨て石に整形するサバキの手筋。
しかし、白19とアテた瞬間、黒20と眼形を奪うのが好手で簡単には治まれない格好です。


白21、23と黒二子を取れた戦果は大きいですが、黒24と迫られたのが厳しい一着でした。
白25から29と左辺を補強せざるを得ず、黒30まで石の調子で中央を厚くして黒好調です。
左上の黒陣は無駄のない布陣で、効率の良い土地が仕上がっています。


左上の黒陣が地になっては勝負にならないので、白31から33と踏み込んでいきます。
黒は厳しく追及する手段はいくらでもありましたが、BensonDarrは堅実な収束を選びます。


黒34のワリ込みは様々な利きが生じるため、左上隅のシノギが楽になる緩着に見えます。
AlphaGoはこうした局面で的確に勝負を決めるので、AlphaGoの域に届いてないようです。
もちろん、この先にBensonDarrは会心の収束を用意してますが、僅かな甘さを感じます。


黒42と白43を交換してから、黒44と封鎖するのが手堅い収束でした。
白Aと眼を作る狙いを消しながら黒Bと左上の白を取る手を見た厳しい一手です。


白45のアテ込みが地味ながら妙手。
白49と左上の生きを図りつつ、白Aと上辺の黒地を削る手を残す鋭い技です。
ただし、黒50から54と左辺の白を攻めながら中央と下辺を固められて黒優勢は揺るぎません。
本局は簡明かつ柔軟に収束するBensonDarrの良さが光った好局と言えるでしょう。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図2:粘り強い形】
白1のアテに黒2と抜くのは軽率。
白3、5の粘りがあり、左辺の白が簡単に捕まらない格好になります。
黒A、白Bでコウになりますが、白Cなどのコウ材があるため白有利なコウ争いです。

「編集後記」
右辺の黒は弱い石でしたが、消極的な守りでなく積極的な守りを選択したのが印象的でした。
手堅く守って力を貯めるのは間違いは少ないですが、すぐに良くなる手でもありません。
黒番はコミの負担も重いので、本局のように積極的な守りが求められてきそうです。

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