囲碁AI・BensonDarrの観戦記(3)

今回の棋譜は昔なら怒られる戦術を用いており、選択肢から外す手法を採用しています。
しかし、部分的に悪いと言われる手法でも、使い方次第では好手に成り得る場合もあります。
囲碁AI・BensonDarrはその可能性の一端を示してくれたように感じます。


【実戦譜:実戦的な石運び】
黒番がBensonDarr、白番が卞相壹六段です。
黒1の三々入りに白2、4と手番を得る受け方を選択します。
白8のカカリに黒AやBと応じるなら無難ですが、何れも全局的には白良しになります。
通常の発想では打開できない局面、BensonDarrが見せた実戦的な石運びを追っていきます。


黒9と白10を交換してから、Aと受けずに黒11と右辺を補強する非常手段を選びました。
右上と右辺の両方を打てますが、黒は至る所が薄いため黒良くないと言われています。
ただし、黒の薄みを咎められないと黒の利だけが残るため、白容易ではありません。


右上隅の薄みを咎めるのは難しいので、白12と右辺から戦線を拡大します。
黒13を許しますが、白14と右下を連打できれば白十分取り戻せると判断したようです。
確かに、黒Aなら白Bで白有利な戦いになり、黒が手抜くなら右辺の力関係が白に傾きます。


黒15の様子見が面白い。
実戦は白16と手厚く受けたが、黒A~Cを狙われるため見た目ほど白得してない格好です。
黒17は相手の出方を見て右辺の打ち方を決める構想で、白の受け方が非常に悩ましい。


白18は必死の反発です。
先に左辺の受け方を見せると、それに合わせて右辺を最適に決められてしまうからです。
白22まで、互いに相手の出方を見てから動きたいため、手の渡し合いが激しくなっています。
しかし、黒23と右辺の受け方を利いて、左上の打ち方を決める方針に変えたのが柔軟でした。
先に相手の態度を引き出せたのが大きく、一局の流れを黒が支配する形となりました。


白24、26と手番を得る打ち方を選択します。
部分的には黒27と右下隅に食い込まれながら黒Aを狙われるため、白不満なワカレです。
白28から32と左上の黒陣を突破できれば、右下の損失を補填できるように見えたが・・・。


黒33、35と左辺の白を重くしながら自身を補強するのが素晴らしい着想でした。
白40と手を戻された時、黒33がひどい悪手となるため普通は思いつかない打ち方です。
しかし、黒は多少損をしても、黒41から左上の白に寄り付ければ黒十分な展開と言えます。
先に損する決め方は相当な勇気と覚悟が必要で、中々真似できることではありません。


最低限の根拠を確保するため、白42と受けざるを得ないところ。
左上の白を横目に、黒43から49と上辺に黒陣を築いて黒優勢は揺るがないでしょう。
左上の攻防は白連打した場でしたが、いつの間にか黒有利な戦いに引き込まれています。
相手の態度を見てから動ければ、局面を自在にコントロールできるということでしょうか。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図1:足早な石運び】
白1のツケは外周を厚くする意図です。
黒8まで、右上の白を補強できましたが、黒地を固めた損失も小さくはなく判断が難しい。
白Aの打ち込みからどれくらい戦果を出せるかですが・・・。


白9には黒10、12と足早に展開されそうです。
白13と追及しても、右辺は連打された場なので黒14、16と軽く整形する要領です。
全局的に白厚い碁形ですが、黒の実利も大きくバランスが取れているように映ります。


【参考図2:捨て石作戦】
白2と隅から受けるのは黒3と右辺を補強されてしまいます。
黒11まで、▲と△の交換が黒良しに働くため、これは白選べない進行です。


【参考図3:厚すぎる格好①】
白2と地に辛く打つのも考えられますが、黒3から7と右辺を厚くされて黒良しでしょう。
白Aは黒Bで止められますし、黒Cの味残りも不気味で見た目ほど白得していません。


【参考図4:厚すぎる格好②】
白2、4と右下隅を固めるのも、黒5から9と厚くするのが簡明です。
白10までの稼ぎは小さくはないですが、黒11のシチョウが成立するので黒打ちやすい碁形。

「編集後記」
人間界で悪いと言われた戦術でも使い方次第で好手に化けることもあるようです。
ただし、中盤以降を正しく戦える前提の打ち方なので、扱いの難しい手法と言えるでしょう。
また、間に合わせの意味もあり、基本的には良くないと考えて差し支えないと思います。

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