囲碁AI・BensonDarrの観戦記(2)

囲碁AI・BensonDarrは野狐囲碁で棋士相手に57連勝の金字塔を立てました。
碁の内容も斬新な手法が多く、新しい碁の打ち方を示してくれているように感じます。
ただし、大石を取りに行って攻めきれずに負けるパターンをよく目にします。
BensonDarrと言えども、空間が広い死活は読み切れていないようです。


【実戦譜:凄まじい構想】
黒番が童夢成六段、白番はBensonDarrです。
前回同様に、黒1に白2のツケから直接働きかけていきます。
白8に黒Aと右下の白に迫るのは下辺の黒を凝り形にされて黒良くありません。
黒9の両カカリに受けず、白10の三々入りから実利を稼ぐ驚愕の打ち回しを見せます。


黒11、13は手番を得て大場に回りたい場合に用いられる手法です。(こちらを参照)
黒17と左下隅を連打できれば、黒好調な石運びに見えましたが・・・。


白18から26と収まられた時、下辺の白が強固で黒の厚みが働きづらい格好になっています。
序盤の数手で両カカリより生じる厚みを想定し、下辺を手堅く構えていたようです。
黒27まで、右辺のまとまり具合が焦点ですが、BensonDarrは華麗に黒陣を破壊します。


白28と黒29の交換は右辺を固める調子を与えるため、通常は躊躇する利かしです。
ただし、AやBの傷や狙いを横目に、白30と踏み込むのが好手で中々捕まらないようです。
右辺の黒陣が荒れてしまうと、白の実利が活きる展開となり黒苦しくなります。


黒31には白32と右辺に食い込んでいくのがサバキの常套手段。
右上の厚みを背景に、黒33から35と最強に追及して黒有利な戦いに見えます。


白36と黒37を交換した後、白38のツケが右辺の黒陣を荒らす決め手となりました。
AやBの利きに加えて、黒の受け方次第では白Cも考えられるため黒は強く戦えません。
右辺の黒陣があっと言う間に攻略され、白の実利が活きる展開に導かれてしまいました。


黒39と手堅く守るのは仕方ないところ。
白40から48と右下の形を崩しつつ、右辺でシノギ形を築いて白満足なワカレです。
一方、白Aと動き出す味も残っており、黒の得たものは少ないと言えるでしょう。


Aの味を緩和するため、黒49と右上隅の白に働きかけます。
ここで、右上を受けずに白50と大場に走るのが軽快な石運びでした。
黒51から57と食い込まれても、白58と上辺を占めればそこまで白損していません。
現局面を見ると、白の手堅い構えにより黒の厚みがまるで働かない碁形になっています。
黒はひどい悪手を打っていないにも関わらず、差が広がるのは不思議ですね。
結果、白中押し勝ち。


【参考図1:地に辛い展開】
白1と両カカリに受けるのは通常の発想です。
黒2から6と左下隅を荒らされた後、黒8と地を稼がれるのを嫌ったのかもしれません。


左下に白が控えているので、白9から17とオサえるのは自然に見えます。
しかし、黒18と地を稼がれると、白は左辺を大きくまとめる必要があり白悩ましい局面。
黒はAなどから荒らす手がかりが残っており、若干黒打ちやすいように見えます。


【参考図2:サバキの手筋】
黒2と下から受けても、白3でサバキの筋に入ります。
続いて、黒Aとアテるのは白B以下符号順で右上の黒を狙われて黒良くないです。


黒4、6と強く受けるところですが、白7から11と外周を厚くして白十分。
中央の主導権を奪えば、左上一帯から白の勢力圏を大きく広げられそうです。
蛇足ですが、白11に黒Aは白B、黒C、白Dで黒の形が崩れます。


【参考図3:詰めを誤る】
黒1に白2と受けるのは軽率です。
黒3と封鎖されると、黒の厚みが活きる可能性が生じるので紛れの要素を与えてしまいます。


白4には黒5と外周を厚くするのが冷静。
白6と黒の勢力圏を牽制しても、黒7と上辺を広げられては互角に近い形勢です。
黒AやBに回られると中央に大きな黒地が見込める局面となり、白不本意な展開でしょう。

「編集後記」
BensonDarrの打ち回しは人間でも理解できる斬新な石運びなので学べる点が多いです。
以前まで良くないと言われた戦術を用いる実戦例もあり、見直す必要がありそうです。
次回は昔なら怒られる戦い方をした例を紹介していこうと思います。

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