囲碁AI・BensonDarrの観戦記(1)

数か月前に現れた謎の囲碁AI・BensonDarrが野狐囲碁で猛威を奮っています。
棋士相手に40連勝、勝率90%以上の記録を打ち出しており、ほぼ毎日対局が行われています。
人間では思い浮かびにくい着想に加え、他の囲碁AIよりも読みの精度が高いように映ります。
今回から序盤戦を中心に、BensonDarrの強さを数回に分けて紹介していきます。


【実戦譜:飛躍の発想】
黒番は朴廷桓九段、白番はBensonDarrです。
黒5に受けず、白6のツケで左上隅に働きかける手法を選択します。
相手の出方を見て先の打ち方を変える意図ですが、左上を固める短所もあり怖い打ち方です。
ただ、BensonDarrは本局以外にも小目にツケる実戦例があり、有力と見ているようです。


黒7から11と左上隅を堅実に固めていきます。
白12を許しても、黒13が左上の白を睨みながら自身を補強する攻防の一手になります。
人間的な感覚では黒悪くない布石に見えますが、次の数手を見て評価が一転します。


白14、16と左辺の黒を凝り形に導くのが柔軟でした。
左辺を固める短所より、石の効率を優先して足早な展開を目指す実戦的な石運びです。
確かに、左辺の黒を攻める展開になりづらいので、本図の進行が簡明かつ有力に見えます。
ただ、左辺が強くなると左上の白も薄くなるため、人間的には不安が残る進行です。


黒17、19で左辺への急な攻めが消えたものの、左辺の幅は狭いため若干黒不満。
黒21と下辺を割りますが、白22と手を戻されると周囲の黒がにわかに薄くなっています。
白24まで、左下一帯の黒が強い石でないため、間接的に黒Aなど狙いづらい格好です。
力関係を活用して、自身の薄みを自然にカバーしている碁形に導いているようです。


左辺の薄みをつけない以上、黒25と下辺から戦いを仕掛けるところ。
しかし、白26で左辺と下辺を分断するのが冷静で黒苦戦を強いられます。
黒27から31と脱出するも、白32の動き出しで黒は至る所に弱い石を抱えた局面になります。


黒33、35に白36の切りから根拠を確かめていきます。
黒39まで、AやBなどを横目に右下隅に食い込まれて黒サバけた格好に見えますが・・・。


右下隅に構わず、白40から42と生きを図るのが手厚い構想です。
黒43に白Aなど攻めにいくのは軽く捨てられ、黒Bから右辺を広げられてしまいます。
一見すると、白は左下一帯の薄みを突いていきたくなりますが・・・。


白44から50と右下隅に先着したのが好判断でした。
左辺の攻防から黒は一切の実利を得ず、白だけ地を稼ぐ展開になっています。
また、白は右下以外に弱い石がなく、黒からの寄り付きが利きづらいのも白の自慢です。


黒51と下辺の白に手入れを促した瞬間、白52から54と黒の形を崩すのが好手順。
黒57で右下の白三子にプレッシャーをかけるも、白58と左辺の黒を攻めて白優勢。
右下の白はA~Cの狙いや根拠を持つ手が残っており、見た目以上にしぶとい格好です。
BensonDarrは大局的なバランスを取りつつ、随所で繊細な技を見せています。
結果、白中押し勝ち。


【参考図1:ツケの意図】
実戦進行は白1に黒2、4と穏やかに受けた理屈になります。
通常、白1に黒Aなどハサミで追及したいところで、消極的な石運びに見えて黒不満です。


【参考図2:ヒラキ過ぎ】
白1と左下の黒を追求するのはやり過ぎです。
左上の白がダメヅマリなので、黒2と左辺を割られて見た目以上に白苦しい戦いになります。


【参考図3:混戦模様】
黒1に白2と中央へ進出したいところ。
しかし、黒3と脱出する調子を与えるため、攻め切れないと空振りした格好になります。
人間的には突破したくなりますが、無用に戦う必要はないということでしょうね。

「編集後記」
本局は中盤以降に明るい打ち回しが見どころなので、ぜひ棋譜を見てほしいところです。
数か月前からBensonDarrの対局を見てきましたが、AlphaGoZeroのような気がします。
石運びを見る限り、AlphaGoTeachingToolに似た打ち方をしている感じがするのです。

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