第22回LG杯朝鮮日報棋王戦決勝三番勝負第2局

2月7日に日本棋院で「第22回LG杯朝鮮日報棋王戦決勝三番勝負」第2局が行われた。
序盤から中国の謝爾豪五段に主導権を奪われ、早くも敗色濃厚な戦況に陥ってしまう。
誰しも投了は時間の問題だと思っていた最中、井山裕太九段だけは諦めていなかった。
中盤で謝爾豪五段のミスもあり、大きく盛り上げるも依然として形勢は覆らない。
最終的な敗因は左辺の白を仕留めず、白半目勝ちの道筋を許してしまったことにあるようだ。

「負けたのが信じられない。なぜ悪くなったのか分からない」と謝五段はコメント残した。
214手目まで続く劣勢を耐えつつ活路を見出すのは、生半可な精神力では成しえない業だ。
明日の第3局で悲願の世界戦優勝を成し遂げられるか、注目していきたい。
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:勝率10%の壁】
黒番が謝爾豪五段、白番が井山裕太九段です。
白1のツケはAlphaGo手法の一つで最近良く打たれるようになりました。
相手の出方を見て先の打ち方を決める高等技術ですが、現局面では有力でなかったようです。


隅から受けると▲が孤立する可能性があるため、黒2と強く反発したいところ。
白3はサバキを求める常套手段で、黒4から6と応じるのもほぼ一本道の変化です。
白から様々な利きがあり、いくらでもサバけそうな格好に見えましたが・・・。


白7から11と整形する調子を求めましたが、黒Aと手を戻さず黒12と応じるのが強手でした。
白はBのシチョウを防がなければならず、見た目以上に形を整えるのが難しくなっています。


白13のトビは黒14を誘って脱出する調子を求める狙いがあります。
しかし、黒16から22と右辺の白を飲み込みながら迫られるので黒苦しい展開です。
黒Aに回られると地の損がひどくなるため、白は上辺を先手で打ち切る必要もあります。
白は解決すべき問題が山積しており、破綻寸前の局面と言えるでしょう。


白23から27と石の調子で整形するのが手筋。
右辺の白を飲まれているので、Aの狙いを横目に白29と上辺への進出を止めたいところ。
ただ、黒30と動き出されると上辺の白が薄くなり、サバキが難しい格好となっています。


白31から上辺の黒五子を狙いにいきます。
白35は黒36の切りを誘導して、先手で白37の位置に石をもっていく意図があります。
将来的に白Aと黒五子を取りにいく際、黒Bなどの抵抗を考慮して白37に配石しておきたい。


種石を取られないように、黒38と抜く一手。
白39、41で上辺の黒七子は取れるが、黒42と外周を厚くされては白相当苦しい形勢である。
囲碁AI・絶芸は白の勝率を約10%と評価しており、人間の眼からも逆転が難しく見える。
続いて、黒Aのコウ材があるため、白は黒Bの仕掛けを防ぐ必要があります。


白43の犠牲打を打って、Aの味を残しながら白45と上辺を先手で補強していきます。
白47と黒48の交換をすることで、最終的に黒Bと手を戻す必要があり白は手番を得られます。
白は上辺の攻防で後手を引く訳にいかないので、多少の損失は仕方ないところ。


黒50から54と中央厚くしながら右辺を固めれば黒満足なワカレ。
白は手番を得られたため、白55から59と右下に先着できましたが相当苦しい碁形です。
地合いと厚みの要素で黒にリードされており、白が勝てる見込みはほとんどありません。



【実戦譜2:攻め合いの錯覚】
黒1、3と下辺を助け出して紛れる要素がないと見られていました。
続いて、白Aは黒Bと切り返されて、黒の手が続かないので・・・。


白4、6と下辺の黒を取りに行った瞬間、黒7と急所を突いたのが失着。
白8のツギで左下の白は見た目以上に手数が長く、下辺との攻め合いは白一手勝ちです。


黒9、11を利かせば、白A付近のダメが詰めづらく黒の手数が伸びているように見えます。
黒15まで、何も工夫せずにダメを詰め合えば白一手負けになりますが道中に妙手があります。


白16から20と最大限に手数を延ばすのは必須の手続き。
黒21で黒一手勝ちに見えますが、白26のワリ込みが妙手で黒窮しています。


黒27、29と左辺の生きを図るしかないですが、白30と下辺を取れれば大戦果です。
ただ、序盤での差が大きく、黒Aから左辺の白に迫られて黒優勢は揺るぎません。
かなり差が縮まりましたが、現状では後一歩届かない形勢です。


【参考図1:コウ争い】
黒1、3と眼を奪えば事件は起こりそうにありません。
白Aのコウ争いが残りますが、白から有力なコウ材はないように見えます。
例えば、白Bのコウ材は黒Cと脱出する手が残っているので受けてもらえません。



【実戦譜3:九死に一生】
白1は本来敗着になり得る危険な一手でした。
黒2とオサえられると、左辺の白は無条件で生きる手段がなく白必敗の碁形です。


謝爾豪五段は楽観していたのか、黒7とヨセて十分と見たのが決定的な敗因となりました。
中央の黒地は見た目ほど大きくならず、白8と生きて白半目勝ちの道筋ができたようです。
この後、井山九段は秒読みの中、正確にヨセを打ち切り逆転半目勝ちを収めました。
結果、白半目勝ち。


【参考図2:黒の決め手】
黒1と急所を突くのが決め手でした。
白2の粘りがありますが、AやBのコウ材があるので黒3と仕掛けて左辺の白を取れます。
一局を通して、謝爾豪五段は勝負を決めるチャンスがあっただけにやり切れないでしょう。


【参考図3:白の最善】
白1、3と生きを図りながら左上の黒地を削るのが最善でした。
中央のまとまり具合が勝負所となりますが、これでも半目勝負だと思います。

「編集後記」
井山九段の驚異的な追い上げが実り、最終局に望みを繋げました。
ただ、謝爾豪五段にこうした粘りを警戒されれば、今後は通用しないはずです。
最終局は序盤で遅れずに打てなければ、勝機は相当薄いと見るべきでしょう。

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