第22回LG杯朝鮮日報棋王戦決勝三番勝負第1局

2月5日に日本棋院で「第22回LG杯朝鮮日報棋王戦決勝三番勝負」第1局が行われた。
日本棋士が世界戦決勝に出場するのは、十数年ぶりで井山裕太九段に大きな期待寄せられた。
序盤のワカレで劣勢に立たされた井山だったが、中盤以降に大きく盛り上げて優勢を築く。
しかし、戦いの最中に生じた隙を中国の謝爾豪五段に突かれ、無念の敗退となった。
本局は残念な結果となったが、2月7日に行われる第2局での巻き返しを期待したい。
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:手厚い構想】
黒番が井山裕太九段、白番が謝爾豪五段です。
黒1に白2と高く構えた場合、黒3と三々に入るのが現代碁の常識となっています。
地に辛い特徴もありますが、白が外周を厚くした際に黒が手番を得やすい長所があります。


白4、6と遮った後、白8と受けるのは珍しい受け方です。
黒9に白10と手を入れれば、白8でAのツギよりも部分的に厚い形を築けます。
通常は黒Bなど上辺に回られて白甘いですが、右上の構えが堅く上辺の価値は低いです。


黒11に受けず、白12から14と封鎖する手を優先します。
最近は両カカリの様々な対抗手段が発見されており、両カカリを許す実戦例が増えています。


白16、18と受けるのが主流となっています。
黒19から21は地を稼ぎながら隅に食い込めるので、よく打たれる手法となっています。
白22は自身を補強するよりも、右辺に黒陣を築かれないように工夫した意味が強いです。


黒23と白の形を崩してから、黒25と地を稼げば部分的には黒の実利が大きいワカレです。
ただし、白30と右辺を占められると、大きくなる土地が下辺の黒陣に絞られてしまいます。
全局的に白厚い碁形なので、単純に下辺を広げても白に深く踏み込まれるのが関の山です。
黒は単調な碁にならないよう、如何に工夫するかが焦点になります。


【参考図1:通常の対応】
白1のツギは無難な受け方です。
しかし、黒2から6と隅の生きを確かめながら左辺を固める展開を許します。


白7は左上の死活を睨んだ手なので黒8と受けるのが相場です。
白9と傷を守る必要があり、黒10と左辺を占めれば黒足早に展開できます。
左下のシマリと呼応して左辺が立派な構えとなったのが大きく、黒打ちやすそうです。


【参考図2:流行形だが・・・】
黒1、3に白4のツギは最近よく打たれる受け方です。
しかし、右上に黒がいるので黒5とAの断点を狙われながら右辺に黒陣を築かれて白失敗。



【実戦譜2:一瞬の隙】
黒1と白2を交換してから黒3とハネるのが好手順。
白4と受けざるを得ないが、左上の形が崩れており黒十分利かした格好です。
黒5のツケで相手の出方を見てから、A~Cの利きを使い分けるのがポイントです。


白6に黒7と白の根拠を狙いながらサバキの調子を求めます。
左辺の白が根無し草になっては白大変なので、白8から12と補強するところ。
黒Aのシチョウを横目に、上辺の白に働きかける流れとなりました。


黒13、15はAのシチョウアタリを見ながら上辺の白陣を低位置に制限する好手。
白は上辺と左辺の両方を打つために・・・。


白16、18と上辺の守りを間に合わせて、白20に先着する苦渋の選択をします。
部分的には黒21の切りが強烈ですが、黒Aと抱えられる訳にいかないので仕方ないところ。


白22の受けに黒23から27と上辺の白陣を削って黒十分な戦果です。
しかし、左辺の利きを保留して、黒31と脱出したのが裏目となってしまいました。


白32と抱えるのが非常に手厚い好手でした。
黒33と大場に走れば黒良く見えますが、白34から36と中央の薄みを突かれ白ペースに。
僅かな隙を見逃さない謝爾豪五段の切れ味が光った局面でした。


【参考図2:白やり過ぎ】
黒1に白2と受けるのは頑張り過ぎです。
黒3、5が利くので、黒7と上辺を割られて白苦しい戦いを強いられます。


【参考図3:形を決める】
黒3から5も利かして左辺の白陣を割りつつ、黒7と中央への進出を止めるのが有力でした。
次に黒Aの追及が厳しいので白は手入れが必要ですが・・・。


実戦のように白8と手を入れるなら、黒9と大場に走って黒優勢。
白Aは黒B以下符号順で助かっているため、見た目以上に左辺の繋がりが強い形です。



【実戦譜3:勝負手が成立】
黒1、3が渾身の勝負手です。
右辺の黒陣が大きくなると、白のリードが消えてしまうので容易ではありません。


白4に黒5、7と右辺を分断して黒有利な戦いとなりました。
全ての白をシノげれば白悪くない展開ですが、無傷でシノぐのは厳しい戦況です。
再び、井山九段が戦いの主導権を握り、僅かに黒打ちやすい碁形です。
しかし、中盤のねじり合いで謝爾豪五段の追撃を振り切れず敗退となりました。
結果、白中押し勝ち。


【参考図4:安全確保】
結果論ですが、黒1の切り違いに白2、4と封鎖するのが柔軟だったようです。
右辺の追及をかわせれば、左辺の白地が大きいので白優勢は保持できています。


黒5以下が一例で、素直に外回りを厚くすれば白十分でした。
中央付近に白地が見込める碁形なので、右辺を荒らされても元を取れそうです。

「編集後記」
中盤戦で井山九段にチャンスがありそうだっただけに残念な一局でした。
第2局までに1日休みがあるので、立て直して良い状態で対局に臨んでほしいところ。

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