第22回三星火災杯世界囲碁マスターズ決勝三番勝負第1局

12月6日に韓国で「第22回三星火災杯世界囲碁マスターズ」決勝三番勝負第1局が行われた。
決勝戦の組み合わせは中国の唐韋星九段と辜梓豪五段となり、中国棋士同士の対決となった。
19歳の辜梓豪五段が勝利目前まで迫るも、最後に大きなミスを犯し好局を逃した。
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:流行りの三々入り】
黒番が唐韋星九段、白番が辜梓豪五段です。
黒2、4を決めてから、黒6と三々入りするのが最近打たれる布石形の一つ。
左下の受け方を見てから黒A~Cの受け方を変えられるのが黒の自慢です。


白7は方向違いに見えますが、三々入り戦術の狙いを緩和させる意図があります。
黒10、12は右下の白を重くして、白Aのヒラキを強要して手番を奪う狙いです。
※三々戦術の狙いはこちらの記事を参照ください。


左下の厚みを背景に、白13と下辺を広げるのが好判断。
▲と△の交換で右下の白は重い形ですが、急な攻めが利きづらいので守る必要はありません。
黒16と左下隅を生きに行った瞬間、白17と強引に封鎖するのが厳しい一手でした。
外周が白一色なため、AやBの傷が残っても白戦えると判断しているようです。


黒22から26と生きを図るのが相場。
黒は外回りの傷をついて左下一帯の白模様を消せるかが勝負所となりました。


【参考図1:押さえる方向】
左上に白が控えているので、白2と押さえる方が自然に見えます。
しかし、黒3から9と先手を取られてから、黒11と高く構えるのが黒の意図です。
左下の白の攻めを狙われているため、白は左辺の構え方が悩ましくなっています。
かと言って、手抜きをするのは黒Aと堂々と割られて白良くないです。(こちらを参照)


【参考図2:工夫不足】
白1と右下を補強するのは足が遅い。
黒2から6と左下隅を生きてから黒8と下辺を占められて、白の厚みが働きづらい碁形です。



【実戦譜2:下辺の攻防戦】
黒1と左方の傷を突いて、左下一帯の白模様を消す展開を目指します。
続いて、白Aの受けは黒B、白C、黒Dと中央を厚くしながら左辺の白を狙われるので・・・。


白2と真正面から戦うところ。
当然、黒3から5と応戦されるが、左辺と下辺の白陣を支え切れれば白悪くない展開です。


黒7と形の急所を突かれても、白8から12と整形しながら分断するのが手筋で白戦えます。
黒は左下一帯をまとめるのが難しく、白ペースに思えましたが・・・。


黒15に白16と受けたため、黒17のツケで筋に入りました。
黒19まで、下辺の黒四子はシチョウで取られないため、白Aと手を戻さざるを得ません。


白20、22と手を戻すのは仕方ないところ。
黒23から27で下辺の黒がシノギ形となり、上方の黒がどうなるかが焦点となりました。


白28と頭を叩いてから、白30を利かして外回りの利きを消すのが冷静でした。
黒31のツケは鋭い手筋ですが、結果的に黒35と手を戻す必要があるので黒苦しい戦いです。


黒37のツケは、中央の白を重くしながら黒39の地点に石を持っていく手筋。
黒43、45に白Aとツゲないため、黒を助け出すことに成功しますが・・・。


白46から50と黒の眼形を奪ってから、白56と中央を補強しつつ下辺を封鎖するのが簡明。
黒はAとBの両方を同時に防ぐ手立てなく、はっきり白優勢となりました。


【参考図3:簡明策】
黒1のホウリ込みに白2と外回りを厚くする方が簡明でした。
黒Aは小さくはありませんが、外回りの黒が薄い格好となるため白十分に見えます。


【参考図4:利かしの意味】
白1に黒2と受けるのは、白3と包囲されて黒ツブレ。
左下の交換により、黒Aには白B、黒C、白Dと受けきれる格好となっています。



【実戦譜3:終盤の悲劇】
白1、3は黒の薄みを強調した手だが、黒4がうまい受けで黒残る碁形となってしまった。
最後の望みは白5のツケから分断を図ることだが・・・。


白7、9と分断した瞬間、黒10でAとBが見合いとなり白ツブレてしまっている。
中国の辜梓豪五段は勝利目前で涙をのんだ。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図5:堅実な勝ちコース】
実戦進行は白の損が大きいので、白1から3と手堅く打ち進めて僅かに白残る形勢です。
内容が良くても、一手のミスで台無しになってしまう碁の恐ろしさを痛感する出来事だった。

「編集後記」
痛恨の負けを喫した辜梓豪五段、明日の第2局までに立て直せるか注目です。
一方、唐韋星九段は世界戦常連ということもあり、大一番での勝負強さは流石だと感じます。

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