第22回LG杯朝鮮日報棋王戦準決勝

11月15日に日本棋院東京本院で「第22回LG杯朝鮮日報棋王戦」の準決勝が行われた。
日本の井山裕太九段が世界一の打ち手と謳われる柯潔九段に勝利し、決勝戦進出を決めた。
なお、決勝三番勝負は来年の2月5、7、8日に行われる予定だ。
以下に対戦成績をまとめたので参照ください。(左側が勝者)

【11/15(水):準決勝】
井山裕太九段(日)ー柯潔九段(中)
謝爾豪五段(中)ー江維傑九段(中)

【2/5(月)、7(水)、8(木):決勝三番勝負】
井山裕太九段(日)ー謝爾豪五段(中)

長い間、世界戦は中国韓国に牛耳られていたが、日本の井山九段がその均衡を崩し始めた。
決勝戦で対決する謝爾豪五段は、19歳で甲級リーグ入りや世界戦8強に残る実力者。
厳しい戦いになることが予想されるが、LG杯初優勝を成し遂げてほしいところだ
さて、対局を振り返っていきます。


【実戦譜1:現代的な序盤戦】
黒番が井山裕太九段、白番が柯潔九段です。
右辺が高中国流の構えの場合、白1に黒2と受ける実戦例が多いです。
白3、5は囲碁AIが多用する手法で、人間界でも数多く打たれるようになりました。
囲碁AIの影響により、良い意味で囲碁の自由度が広がってきています。


上辺に白陣を築かれないよう、黒6から8と突破するのは当然の態度。
黒14まで、白は右上隅に食い込み、黒は外周を厚くするワカレとなった。
部分的には黒悪くない交換だが、白Aと動き出す味があり、白も楽しみがある形です。


白15に黒16と積極的に受けたのが井山九段の工夫。
しかし、白17から21と右辺を荒らしたのが柔軟で黒の意図を崩している。
白は大きくなる土地を根こそぎ荒らし、中央を囲わせる碁形に導いているように思えます。


黒22と△を大きく攻めるように構えますが、白23と自分から動かず相手の出方を伺います。
黒24にも白25から29と地を稼ぎ、黒から下辺を仕掛けざるを得ない戦況となりました。
白は相手の動きに応じて手を変えるため、黒は相手を上回る強手を放つことが求められます。


【参考図1:白厚い碁形】
黒1から5も定石の一つですが、白6と上辺に白陣を築かれて黒良くないです。
右辺の黒陣は広げると上辺の白陣も広がるため、間接的に黒模様を広げづらくなっています。


【参考図2:地に辛い構想】
黒1に白2と押さえ込むのは、黒3から7と右辺を確定地を築けます。
白の厚みも相当だが、下辺の白陣は荒らす余地があるため黒に軍配の上がる展開です。



【実戦譜2:下辺の競り合い】
黒1に白2と強く反発して中央の黒の勢力圏を消す手がかりを探ります。
いくら手厚く打っても、どこか一箇所でも決壊すれば台無しになるのが模様の碁の怖さです。
黒も各所で力を貯めた地の利を活かし、黒3から7と力強く応戦していきます。


白8から14までは一本道の進行。
黒は下辺を整備しつつ、白を強く追及していきたいところ。


黒15、17と両方から利かす展開を選択。
黒21と左辺を整備し、下辺の白をどれだけ攻められるかが勝負所となりました。


一見すると、白22は黒23、25の出切りを誘発して白苦しい格好に見えます。
しかし、白26と黒27を交換してから白28のツケが好手で黒の動きが制限されていきます。


黒29から33と守らざるを得ないが、白34と逃げ出されて黒の応手が悩ましい。
△が働いているため、下辺の黒を一手で味よく補強できないのが黒の泣き所。


黒35に白36と動き出したのが面白い。
次に白41で中央の黒が取られるため、黒37と白38の交換をしなければなりません。
ただし、この交換は中央の白を強くする悪手なので、本来は打ちたくない手です。
黒39と手を戻す必要があり、白40から42と左辺の黒を攻めつつ中央へ進出し白有利な展開。


【参考図3:白有利な戦い】
白1に黒2と受けるのは軽率。
△に白石があるため、黒4と押さえ込んでも白5の切りで白有利な戦いになります。



【実戦譜3:大胆な打開策】
黒1は白Aを防ぐ必要な守りです。
黒3、5で左辺と中央を補強できましたが、白6が強打で依然白優勢は崩れません。


黒7から17と手順を尽くして整形しますが、白18が鋭く黒打つ手に窮しています。
続いて、黒Aと連絡するのは左辺の眼形が崩れるため、白Bの分断が厳しくなります。
白の技が決まってしまい、黒苦しい展開に見えましたが・・・。


黒19と白四子を取り込むのが思い切りの良い構想でした。
白20から24と左下の黒を飲み込まれても、黒Aが利くので将来的に攻め取りが狙えます。
黒25と戦線を移せば、白優勢ながらも黒良しに転じやすい碁形を築けたと言えるでしょう。


【参考図4:ノゾキの効果】
白1に黒2と耐えるのは勝機の薄い打ち方。
白3と分断されても左辺の黒は生きそうですが、白Aと左上の黒を攻められては黒負けです。



【実戦譜4:力勝負を制す】
白1、3はシノギを狙う意味もありますが、相手の受け方を見る意味が強いです。
下辺の白を無理矢理取りにいくのは味が悪すぎるため、黒4と受けるのが相場。
ただ、一連の流れは白Aを残しながら白5と打つ調子を求めた無駄のない石運びです。


黒6から10と右辺を分断した瞬間、白11と動き出すのが白の思い描いた展開。
白Aなどを見られており、下辺の白を無条件で取るのは難しい格好です。


黒12、14と下辺の白を攻めにいったのが冷静でした。
白Aでコウになりますが、黒Bなどのコウ材があるため白容易ではありません。
また、仮に白がコウに勝てても、黒は無傷に近い状況なので白面白くない展開です。


白15に黒16と下辺の白を取りにいったのが強手でした。
外へ脱出を図るのは、黒Aが利いているため中央のシメツケを狙われます。
また、右辺の白を飲み込まれる可能性もあり得策ではありません。


白21と黒22を交換してから白23のハサミツケがやり過ぎだったようです。
黒26のナラビが好手で白収拾つかない格好となっています。


白27から35と動き出すも、黒36と下辺の白を制しては黒成功です。
白は右辺に弱い石を二つ抱えており、何れかの白が取られる格好となりました。


白37は形の急所ですが、黒38から40と右下一帯の白を飲み込んで黒十分です。
右下の戦いは白から仕掛けていきましたが、黒26の一撃で白の構想が瓦解したようです。
苦しい展開でも、黒有利な戦場に引き込んで戦い抜く井山九段の力強さが光った好局でした。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図5:白のサバキ形】
白1に黒2と手堅く下辺の白を飲み込むのは黒失敗。
白3から9と外回りを厚くされて上辺の発展性を消されてしまいます。
また、白Aの狙いも強烈で、これは黒負けコースです。

「編集後記」
日本の井山九段が中国の第一人者である柯潔九段に勝利し、LG杯初の決勝進出を決めました!
決勝戦は棋聖戦と重なる時期ですが、日本に世界戦優勝の栄冠を持ち帰ってほしいですね。

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コメント

  1. リスナーβ より:

    解説会場では【実戦譜3:大胆な打開策】の黒5のコスミをメイエン先生が大絶賛するも、後に登場したイヤマンが黒5のコスミが失敗で一気に苦しくなったと発言して、会場大爆笑でした(笑)