AlphaGoZeroの自己対戦解析(7)

AlphaGoZeroの強さが凄まじいため、教師なし学習が大きな成果を上げたように見えます。
しかし、根本的に強化学習のアルゴリズムが以前とは異なるため、判断が難しいところです。
人間の棋譜学習をしたMasterに同じ条件で強化学習すれば、Zeroを超える可能性もあります。
今回の論文は「教師なし学習と新しいアルゴリズムで強くできた結果を示すもの」であって、
「人間の棋譜学習を否定したものではない」ことを留意しなければなりません。
さて、対局を振り返っていきます。(棋譜提供:DeepMind社)


【実戦譜1:アルファ碁Zeroの新手法】
黒番がAlphaGoMaster、白番がAlphaGoZeroです。
白1までの布石は毎度同じ形になっており、双方不満ない展開と見ているようです。
右辺の価値は低い場なので、黒2に白3とハサんでAの三々入りを催促するのは当然の態度。
黒4はBと左上の白に圧力をかける狙いと、Cと上辺の白を攻める狙いを見た面白い手です。
しかし、Zeroの力強い打ち回しにより、黒の意図は崩れていきます。


白5と下辺の黒模様を制限するのが好点。
下辺を受けていては左上一帯の黒をまとめて攻められるため、黒6から8と反発するところ。
この瞬間、白9とツケるのがZeroの用意していた新手法でした。


黒10の受けを見て、白11を利かしたのが好手順。
白は下辺の黒模様を厚くされても、左下隅に食い込めば十分と見ています。
白13が鋭い切り返しで黒は強く追及することができません。(参考図を参照)


黒14と外回りの厚みに傷が残らないように対応していきます。
白15から21と左下隅に食い込むことができ、白は当初の目的を達成できた格好となりました。


黒22から26は左辺を分断する手筋。
黒28は下辺の模様を広げる要点ですが、白29が左辺を助けながら地を稼ぐ好点になります。
▲を活かせない碁形に導かれ、早くも黒の意図が崩れた展開となりました。
※白27は22のツギ


【参考図1:白のサバキ】
白1に黒2、4と強く反発するのも考えられます。
一見すると、白困っているように見えますが・・・。


白5、7を決めてから白9と左辺を連絡するのが地に辛い打ち方。
続いて、Aの黒三子取りとBの動き出しを見れるので白成功です。



【実戦譜2:素晴らしい大局観】
黒1と上辺の白を大きく攻めて局面打開を目指します。
白2は薄い構え方ですが、右辺の価値が低いことから黒Aから迫りにくいところ。
かと言って、他に回るのは白Bの切りが強烈なので黒忙しい局面となっています。


黒3、5は右上の白に直接働きかけて、白Aの切りを緩和する狙いです。
現局面では、直近の問題である白Aを防がないことには話が始まりません。
しかし、白8と右上を固めた損失は大きく、黒ツライ局面が続きます。


右辺は双方にとって価値の低い場であるものの、白10から12と地になれば大きいです。
黒17まで、白AとBを見合いにされて、中央の黒の勢力圏が思うようにまとまりません。
白は左辺や右辺で確実にポイントを稼ぎながら、着実に局面を狭くしている印象です。
後は中央の勢力圏を消して勝ちというZeroの勝ちパターンに誘導されたように感じます。


【参考図2:焦点は右辺】
実戦のように形を決めず、黒1と上辺の白を攻めたいところ。
しかし、白2から6と分断されると、△の配石が良いため黒不利な戦いを強いられます。



【実戦譜3:凄まじい破壊力】
黒1と下辺を囲った瞬間、白2と様子見するのが面白い。
A~Dの利きが見られているため、黒の応手が見た目以上に難しいのです。


黒3から7と全ての白を取りにいくのは当然の態度。
下辺には数多くの利きがあるため、黒Aと手堅く受けたいところだが、
白Bから黒Eと中央の勢力圏を消された後、白Fと動き出されて白優勢は明白です。


黒は活路を見出すため、黒9から13と下辺を大きく囲いにいきます。
しかし、Zeroの鮮やかなサバキが炸裂し、黒の勢力圏を瓦解していくのです。


白14から18と下辺に味をつけた後、白20のハネが激痛。
黒Aと封鎖したいですが、白Bの動き出しで黒陣を支えきれません。
巧みに手を作っていくZeroの力強さに感服せざるを得ません。


黒21と受けざるを得ないのが泣き所。
白22と下辺の黒陣を突破して地合いで白優勢を確立しました。
黒23から27は中央の白を攻めつつ、上辺の白を大きく飲み込む狙いをもった勝負手。
中央の白は心許ない格好に見えますが、Zeroはシノギ形をアッサリ築いていきます。


白28と下辺を動き出して利きを作るのがうまい。
白38まで、A~Cの利きが生じたことにより、中央の白を取ることは困難になりました。
下辺の白を助け出す手も残っており、黒の勝負手をうまくかわすことに成功しています。
Zeroの碁を見ていると、模様の碁を打つ難しさをひしひしと感じますね。
結果、白中押し勝ち。


【参考図3:筋に入る】
白1に黒2と押さえるのはやり過ぎ。
白3でA~Cの傷を見られ、下辺の黒陣が崩れてしまいます。


黒4と下辺の白三子を取りにいくのは、白5から9で筋に入っています。
続いて、黒Aと逃げ出せますが・・・。


黒10には白11、13で下辺の黒陣を突破できます。
黒Aの抜きに白Bで黒二子を取れます。

「編集後記」
AlphaGoZeroのずば抜けた手の見えと正確な形勢判断に毎度驚かされます。
打たれてみればなるほどと思えますが、人間的な視点では相当怖い打ち方に映ります。
ただ、この恐怖心は読み切れないから生じるものなので、何れ改善しなければなりませんね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする