AlphaGoZeroの自己対戦解析(1)

今回からAlphaGoZeroの自己対戦解析を始めていきます。
まず、公開された自己対戦譜の種類は4つに分類されます。

1、対AlphaGoLee(李世乭九段に勝利)ー20block
2、対AlphaGoMaster(柯潔九段に勝利)ー40block
3、20block版の自己対戦
4、40block版の自己対戦

気をつけるべき点は、20blockと40blockでは別物の強さになっていることです。
(blockはNeural-Networkの層の数を表しており、簡単に言うと思考回路が増えています)
棋譜を調べる際も、この違いを意識して見れば気づく点があると思います。
例えば、20blockでは多彩な布石、戦術を駆使している印象が強いですが、
40blockになると布石の数手までほとんど同じ形になることがあります。

今回は対AlphaGoMaster戦から解説します。(中国ルール、コミ7目半、持時間2時間)
特徴的な点は、AlphaGoZeroが黒では17手、白では16手までほぼ同じ進行を辿ります。
さて、対局を振り返っていきます。(棋譜提供:DeepMind社)


【実戦譜1:布石の分岐点】
黒番がAlphaGoMaster、白番がAlphaGoZeroです。
黒3、5と二間ジマリに構えるのは人間界でも大流行している形の一つ。
白6と三々入りする手法も特徴的で、AlphaGoの場合は有力な戦術と見ています。
黒15の肩ツキに白16と好点に走って、黒の意図を崩すのが面白い石運び。
黒Bと押さえ込まれても、白悪くならない工夫を凝らされています。


【参考図1:囲碁AI的な発想】
白2の打ち込みへの対応が見た目以上に悩ましい。
単に黒3、5と根拠を奪いながら攻めるのは、白6で左上の黒が弱くなってしまいます。
左下の黒陣は白A~Cなど荒らす余地が残っており、全てが黒地でないのもツライところ。


【参考図2:Masterの勝ちパターン】
黒1に白2などと受けるのは、黒3で左辺の模様が広がり黒好調。
後に黒Aと押さえ込むのも大きく、自然と黒地が増えていく展開になります。


【参考図3:Zeroの対抗策】
前図では黒良い流れとなるため、Zeroは白1と下辺を割る進行を選択。
黒2は白3と先手で右下を守られてから白5、7と中央に進出する調子を与えます。
右下の黒を孤立させつつ、左辺の模様拡大を制限できたので白十分なワカレです。
左辺の黒陣は白A~Cと踏み込む余地があり、見た目ほど大きくなりません。



【実戦譜2:大模様形成】
黒1に白2と距離を取ったのが面白い石運び。
先の展開を想定した場合、いろいろな面でプラスに働く可能性が強いからです。
AlphaGoは黒3の両カカリを許す傾向が強く、厳しい手段と見てないかもしれません。


白4、6と無難に対応していきます。
△と広く構えられているため、黒7から11と右辺の黒を補強するところ。
白12まで、上辺に大きな黒地が見込めない碁形なので、黒Aと打ちづらいです。
間接的に▲を助け出せない格好となり、両カカリの攻防は白得しているように見えます。


黒13と白14の交換は、部分的に黒損なワカレですが、
黒15から19を利かすと上辺がほぼ白地になるので、固めても良いという判断でしょう。
実際、黒21から中央を大きく広げられると、人間視点では黒悪くないように見えます。


白26に黒27と白28を交換してから、黒29とハネるのがMasterの工夫。
黒31に手抜きするのは黒32、白A、黒Bで右辺の白を大きく攻められて白失敗。
白32と受けざるを得ないが、黒37と模様に芯を入れて黒好調な展開だと思いたい。
ただ、打ち進めていく内に左辺の黒陣が見事に消えてしまうのです・・・。


【参考図4:肩ツキが絶好の位置に】
黒1に白2とハサむのも考えられます。
黒7まで無難なワカレですが、▲が右下の白模様を制限する絶好の位置にあります。
白8と大きく攻めようとしても、▲は軽い石なのでいくらでもサバけます。


【参考図5:全局的な模様】
前図を避けるため、黒1に白2と変化するも一策。
それには黒3から11と手厚いワカレを選択して、全局的に黒厚い碁形となります。
白は大きくなる土地がなく、黒は弱い石がない状態で大きな地を見込める展開です。


【参考図6:切りはやり過ぎ】
黒1に白2の切りで戦うのは白無理です。
黒5が利くため、かえって左辺の模様を広げる調子を与えてしまいます。



【実戦譜3:超人的な石運び】
白1を利かしてから白3と突入してきました。
取るだけなら可能だと思いますが、上から利かされて黒模様を消されては白良しです。
冷静に考えてみると、なるほどと思えますがこうした発想は中々浮かびません。


黒4と左下を固める手を選択した瞬間、白5と切り違うのが好手。
先に白5を決めると、黒Aと迫られる可能性があるからです。
ここで、黒も手抜きをして黒6と上辺の受け方を聞きました。
左下でコウが発生する可能性があるので、コウ材作りも兼ねているかもしれません。


白7から11は右辺に対する封鎖を嫌った受け方。
黒12、14と左辺側の封鎖を許すが、黒16と手を戻す必要があり白17と左辺に回れます。
下辺は白A、黒B、白Cとヨセる手が残っており、白がうまく打ち回しています。


【参考図7:手厚い構想】
黒1に白2と受けるのも自然な一着。
ただし、黒3から7と露骨に黒模様を広げられても白難しいように思えます。
左辺の△が丸取りされる上に、黒Aなどが利いていて見た目以上に中央が厚いです。



【実戦譜4:確かな収束】
白1、3と上辺から模様を削ってから白5と踏み込むのが鋭い収束。
右下と中央の黒が薄いため、黒は白を取りに行けないのが泣き所。
中原は黒の厚い場のように見えたが、気づけば黒足りない形勢となっています。
AlphaGoZeroはずば抜けた手の読みと高い形勢判断力を持ち合わせているようです。
結果、白中押し勝ち。

「編集後記」
正直言うと、AlphaGoZeroは強すぎてどこまで読めているか測り切れません。
序盤の強さはMasterと遜色ないですが、読みの差でZeroが圧倒しています。

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