2017利民杯世界囲碁星鋭最強戦ー決勝

10月18日に「2017利民杯世界囲碁星鋭最強戦」の決勝が行われた。
年齢制限により、最後の出場となる柯潔九段が許嘉陽六段を破り、有終の美を飾った。
柯潔九段は百霊杯、三星火災杯、夢百合杯に続き、5回目の国際戦優勝を記録した。
(2014年:百霊杯、2015年、2016年:三星火災杯、2016年:夢百合杯)
さて、対局を振り返っていきます。
※10/19(09:15):誤字脱字を一部修正しました。


【実戦図1:囲碁AIの石運び】
黒番は柯潔九段、白番は許嘉陽六段です。
黒1の二間ジマリはアルファ碁が用いて以来、大流行している構え方。
白2に黒3を利かしてから黒5と三々に入る呼吸もMasterの60局で似た進行があります。
アルファ碁が現れてから2年しか経ちませんが、碁の打ち方が劇的に進化しています。


白6から12は基本定石ですが、最近は打たれないため目新しく見えます。
黒13は左辺の白模様拡大を抑制しながら右下の黒陣を拡大させる狙いがあります。
ただ、白14で左上の厚みを活かしやすい碁形となるため、黒の打ち方が難しそうです。


黒15と右辺に構えて、下辺の打ち込みを誘います。
下辺の攻防次第では左辺の白模様に雪崩れ込める可能性があるからです。
しかし、白16から20と軽く打たれると、どう薄みを突いていけば良いか悩ましいところ。
単に黒Aと受けるようでは、中央の主導権を得た白に軍配が上がります。


実戦は黒21と白の薄みを突いていきます。
ここで、白22から28と下辺を捨てて中央を厚くするのが好判断でした。
下辺の黒地は小さくないものの、左辺一帯の白模様が深くなり白十分なワカレです。
現局面では左上の厚みが大いに活きる展開なので、黒の三々入りが悪手となっています。


【参考図1:人間的な着想】
黒1と白2を決めてから黒3と左辺を割るのが自然に見えます。
白4には黒5と高く構えて、黒Aから左上の白に寄りつく具合を睨みます。
左下の白陣も黒Bの踏み込みが残っており、全てが白地になった訳ではありません。


【参考図2:負けコース】
黒1と左下の黒を補強しながら下辺に構えるのが堅実です。
しかし、白2と右辺を割られると、大きな黒地がつく場がなくなるため黒劣勢でしょう。
下辺の黒陣は白AやBと荒らす手が残っており、大きくまとまりません。



【実戦図2:凄まじいシノギ】
黒1と深く踏み込んだのが勝負手。
左辺の白陣を根こそぎ荒らせれば、下辺の黒地が大きいので黒勝勢となりますが、
白2、4と手堅く応じられて、とてもシノギ切れる石には見えません。


黒5と白6を交換した後、黒7と押すのが面白い。
白Aの切りは形が悪いので、黒を分断する手を打ちづらくした意味があります。
白8、10で左辺の黒は虫の息に見えたが、柯潔九段の力強いシノギが炸裂します。


黒11はAの利きやBの狙いを残す大切な手続き。
左下に進出を許すと眼形を築かれやすいため、白12と押さえるのは当然の一手。
黒15まで、左辺の具合と中央進出を見れるので、黒のシノギが見えてきました。


白16、18と中央の眼を奪う進行を選択。
黒19で白二子を助け出せない格好だが、白20から24で黒は一眼しかない格好となります。
黒は中央へ脱出する以外に活路がありません。


黒25と脱出を図るのは当然の態度。
白26は左上隅の死活を横目にAを見た手だが、黒27のノゾキが好手で黒シノゲています。
黒29に白Bと無条件で取りにいくのは黒C、白D、黒Eの傷があるため難しいです。
白30は苦肉の策ですが、左上隅は手残りなので白イマイチな戦果と言えるでしょう。


黒31が面白い様子見。
白32と分断しても、左上隅の黒を取り切れていない(コウ残り)のが白の泣き所。
黒33から41と効率的に左辺を守れたのが大きく、形勢は黒に傾きつつあります。


白42、44を利かしてから、白46と黒を取りましたが余りにも手をかけ過ぎました。
左辺は手抜きできるため、黒49の好点に先着してはっきり黒優勢となりました。
絶体絶命の姿をしていたはずが、終わってみれば綺麗なシノギ形を得ています。
柯潔九段の勝負強さと読みの正確さには舌を巻きますね。
結果、黒中押し勝ち。


【参考図3:シノギの確認】
白1の切りには黒2のサガリが利くため黒シノギ形です。
白3と眼を奪ってきても、黒4が好手で眼を作ることができます。


白5、7と強引に眼を奪いにいくのは、黒8で左辺の白を取れます。
白に切られても黒にシノギがあるので手抜きできますね。


【参考図4:切断の変化】
白のシチョウが良い局面なので、白1から3と切るのも考えられそうです。
外回りから策動するのは難しいため、黒Aを見て左下で生きる展開を目指します。


黒4から10と露骨に形を決めてから、黒12と手堅く生きるのが簡明です。
各所で稼いだ黒の実利が大きく、黒十分な展開でしょう。

「編集後記」
世界のトップ棋士の対局を見ると、囲碁AIの手法が数多く用いられていると感じます。
ここ数年は囲碁AIの手を試行錯誤する時代になりそうです。

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